なんでもマルチメディア(333):新光ファイバー・ケーブル NTTが「ホーリーファイバー (holey fiber)」と呼ぶ、画期的な光ファイバー・ ケーブルを試作したという発表がありました。現在通信事業者が使っている代表的な光ファイバー・ケーブルは、シングルモード・ファイバーです。これの材料は石英ガラスで、光の屈折率が異なる、コアと呼ぶ中央部分と、コアを取りまくクラッドと呼
ぶ部分の二重構造になっています。コアの直径は0.01mm程度、クラッドの直径は0.1mm程度の細さです。 都丸敬介(2003.12.22) |
なんでもマルチメディア(332):米国のブロードバンドネットワーク 1993年9月に米国のクリントン政権が「全米情報基盤(NII)」構想を発表してから10年たち、米国のブロードバンドネットワーク時代が本格的に進む気配が見えてきまし
た。 都丸敬介(2003.12.14) |
なんでもマルチメディア(331):観音路 季節はずれの台風が通り過ぎるのを待って、琵琶湖東岸に点在する観音様を見て回りました。目当ては渡岸寺の国宝十一面観音菩薩でしたが、タクシーの運転手さんの案内で、渡岸寺のほかにもいくつかの寺や立派な収蔵庫に収まっている仏像を拝観し
ました。 |
なんでもマルチメディア(330):シルクロード 1979年から1984年にかけてNHK「シルクロード」プロジェクトの取材班が作成した、全放送内容を収録したDVD(15枚)を入手しました。この番組が放送された頃は、仕事が忙しくて、テレビを見ている時間が全くありませんでしたが、日本放送出版協会が出版した本(12巻)を読んで、シルクロードの様子を心に描いていました。 都丸敬介(2003.12.1) |
なんでもマルチメディア(329):IP電話のサービス品質 今日(2003年11月23日)の日本経済新聞・日曜特集解説記事で、IP電話のサービス品質に関する苦情や問い合わせが急増していることを取り上げていました。この記事では、主なトラブルとして、「通話が途中で切れる」「通話中に雑音が入る」「音声が途切れる」といったことを取り上げて、その原因を説明しています。これらのトラブルがあることは事実ですが、「IP電話の技術は発展途上であるにもかかわらず、一気に普及したために、ちょっとした不具合に大勢が反応してしまう」という分析には |
なんでもマルチメディア(328):e爆弾 米国の著名な科学技術雑誌の最新号にe爆弾開発の現状についての解説記事がありました。 都丸敬介(2003.11.16) |
なんでもマルチメディア(327):プレゼンス情報通信 インターネットあるいは通信事業者の専用IPネットワークを利用する情報通信サービスの一つとして、プレゼンス情報を扱うものが目につくようになりました。プレゼ
ンス情報は所在情報のことです。事務室の入口や机の上に「在席」「会議中」「出張」などと所在を表示することが一般に行われています。プレゼンス情報通信では、ユーザーが今どこにいて利用可能な通信手段はなにかといった情報をネットワークシステムが把握します。誰かと連絡を取りたい人は、プレゼンス情報に基づいて電話、 都丸敬介(2003.11.10) |
なんでもマルチメディア(326):携帯電話と固定電話 国連の下部組織であるITU(国際電気通信連合)の統計データによると、2002年末の世界の携帯電話利用者数は11億5千5百万で、固定電話回線数11億2千9百万を上回ったということです。2003年の増加数の予測値は、携帯電話と固定電話を合わせて2億6千万ということですから大変な数です。 都丸敬介(2003.11.4) |
なんでもマルチメディア(325):エレベーター 過日知人に招かれた日本料理屋で畳敷きのエレベーターに乗りました。これまでに数え切れないほどエレベーターに乗りましたが、畳敷きに出会ったのは初めてです。 都丸敬介(2003.10.26) |
なんでもマルチメディア(324):身体認証 安全な社会を維持するためのセキュリティ技術として、身体認証技術の導入が加速 してきました。身体認証は人の身体的特徴に基づいて本人であることを確認することで、バイオメトリクス認証あるいは生体認証とも呼ばれています。 都丸敬介(2003.10.13) |
なんでもマルチメディア(323):IP電話機 IP(インターネット・プロトコル)ネットワークを使う格安電話サービスとして利用者が急増しているIP電話サービスでは、従来の固定電話サービス用電話機を使うことができますが、最近はIP電話機の新製品が次々に発表されています。 都丸敬介(2003.10.5) |
なんでもマルチメディア(322):ICタグ 最近の新聞記事ではICタグ(荷札)関係の報道が目に付きます。ICタグといってもピンとこない人が多いので、記事の中には次に引用するような解説がついています。「ICチップに情報を書き込み商品管理などに利用する技術。」「商品の一つひとつにICタグを取り付けることで、どこに、どの商品がどれだけ存在するかを正確に把握できる。」「ICタグは電波を発し、1−2メートルの範囲内であれば受信器
で認識できる。」 都丸敬介(2003.9.29) |
なんでもマルチメディア(320):テレコム2003 10月12日から18日まで、スイスのジュネーブでITU主催のITUテレコム2003が開催されます。ITU(国際電気通信連合)は国連の下部組織で、電気通信技術や無線技術の国際標準化、発展途上国の電気通信サービス基盤整備の支援などを行っています。 都丸敬介(2003.9.15) |
なんでもマルチメディア(319):ザクロ 猫の額ほどの我が家の庭に一本のザクロの木があります。25年前に家を建てたときに、知人の家から分けていただいて、車のトランクに積んで運んだものです。すっかり大きくなり、毎年甘くて美味しい実がなっていました。3年前に植木屋さんに頼んで枝をおろした後は、体力の回復にエネルギーを取られて実がなりませんでしたが、今年は久しぶりに実がなりました。 都丸敬介(2003.9.7) |
なんでもマルチメディア(318):Lモード端末 この雑文の第284回(2002年12月)で、NTT東西が提供しているLモードについて書いたことがあります。現在の契約数は50万程度のようなので、普及が軌道に乗ったとは言えないかもしれませんが、サービス内容は増えています。商店のPOS(ポイント
・オブ・セールス)端末をLモードに置き換えたという話もあります。しかし、Lモード対応端末の現状を見ると、優れた素材を活かしていないという感じがします。 都丸敬介(2003.8.31) |
なんでもマルチメディア(317):無線LANの性能 公称最大データ伝送速度が11Mビット/秒の、IEEE802.11bという規格の無線LANが、企業だけでなく多くの家庭にも普及しました。そして、次の段階として、公称最大データ伝送速度が54Mビット/秒のIEEE802.11a規格およびIEEE802.11g規格の高速無線LANの導入気運が高まっています。無線LANとは別に、携帯電話の分野でも高速データ伝送サービスの開発競争が続いています。 都丸敬介(2003.8.25) |
なんでもマルチメディア(316):停電と電話 ニューヨークからオタワにいたる広い地域で長時間停電が発生して、多くの人たちが影響を受けました。最近は、こうしたトラブルが発生すると、必ずのように電話が使えなくなった様子がテレビや新聞で報道されます。 |
なんでもマルチメディア(315):フルーツライン 福島西インターと福島飯坂インターの区間の東北自動車道と並行してフルーツラインという一般道路があります。初夏のサクランボから始まり、桃、梨、リンゴといった果物を栽培する果樹園の即売店が道端に並んでいます。 都丸敬介(2003.8.12) |
なんでもマルチメディア(314):英国の温泉 毎週、温泉巡りのテレビ番組があり、テレビドラマでも温泉旅館を舞台にしたものが数多くありま 都丸敬介(2003.8.3) |
なんでもマルチメディア(313):IPセントレックス コンピューターのために開発されたIP(インターネット・プロトコル)ネットワークを利用するIP電話が、格安電話として注目されています。さらに、IPネットワーク事業者は、PBX(構内電話交換機)を使っている企業内電話網の代替手段
として、IPセントレックスサービスに力を入れています。 |
なんでもマルチメディア(312):システム評価 以前、ある企業の経理部門の幹部社員に「あなたの部署ではどのような仕事に最も力を入れていますか」と質問したことがあります。答えは「受注や売り上げなど、経営に関する全ての項目について、毎月の予算と実績のデータを集め、誤差が生じた原因を解明することです」ということでした。これは当たり前のことですが、確実に実施するには大きな努力が必要です。 都丸敬介(2003.7.20) |
なんでもマルチメディア(311):電気通信事業法 今開かれている国会で、電気通信事業法の大幅な改定が決まったようです。1985年 に施行された電気通信事業法は、電気通信事業を自由化した画期的な法律であり、この法律が施行されてから1〜2年の間に数百の電気通信事業者が生まれました。当時
の郵政省の関係者が「一つの新しい法律が生み出した企業数の多さでは記録的だ」と 胸を張っていたことを思い出します。 従来の電気通信事業法では、電気通信回線設備を所有している第一種電気通信事業者と、電気通信回線設備を借りて通信事業を行う第二種電気通信事業者が区分けされていましたが、今回の改訂では第一種と第二種の区別が無くなりました。通信料金設定の自由度も一段と大きくなったので、同じ通信サービスでも、利用条件によって料金設定の幅が大きくなるようです。 |
なんでもマルチメディア(310):ウィンブルドンテニス 今年のウィンブルドンテニス大会も大詰めを迎えました。テレビで試合を見ていると、1980年代のことを思い出します。この頃、毎年6月下旬にロンドンで開かれていた技術コンファレンスに、何年か続けて参加していました。 |
なんでもマルチメディア(309):ADSLの速度 ADSL(非対称ディジタル加入者線)の伝送速度表示があいまいで実態に合わないこ とについ |
なんでもマルチメディア(308):技術解説 ある出版社から頼まれていた、通信ネットワーク分野の先端技術解説書の原稿を書 き上げて、気が抜けたような状態になっています。単行本一冊の原稿を書くことは、
マラソンを走るようなことです。これと較べると、雑誌の連載記事を書くことは、中距離を走るのに相当します。スポーツの世界では、マラソンを走りながら、中距離走や短距離走を挟み込むことはできないでしょうが、原稿書きではそれができるから面白いことです。ビジネスでも、大規模プロジェクトを推進しながら、幾つかの小さなプロジェクトをこなすことがあります。 |
なんでもマルチメディア(307):迷惑メール 以前から米国発の迷惑メールが届いていましたが、昨年(2002年)秋頃からその量 が急速に増えてきました。今では毎日20件くらいになりました。朝届くものと夜届
くものにグループが分かれているところをみると、米国の東部と西部に発信元が集 まっているように思えます。苦情を申し立てたりすると、かえってこちらの存在が
はっきりしてしまうので、全て無視していますが、米国のネット社会の暗部を毎日感 じています。 |
なんでもマルチメディア(306):携帯電話機の技術 最先端技術の多くは、ニーズ主導で生まれています。携帯電話機の急速な進歩を見ていると、日本の企業が持っている技術力に驚かされるばかりです。 都丸敬介(2003.6.7) |
なんでもマルチメディア(305):コンコルド 2003年5月31日、超音速旅客機コンコルドの最後の飛行が終わったことが報道されました。残念ながらコンコルドに乗ったことはありませんが、ロンドンのヒースロー
空港やパリのドゴール空港で何回も見ました。一度は、着陸態勢に入って、手が届くくらいに感じる低空で頭の上を通り過ぎるのを見ました。 |
なんでもマルチメディア(304):大学の講義某工科系大学から頼まれて、在学中に経済産業省主催の情報処理技術者試験に挑戦 する講座で講義をしています。挑戦する科目は、テクニカルエンジニア(ネットワー ク)という、ハイレベルの試験です。毎年10月に試験があり、昨年は受験申込者が 6万人弱、合格率が4.2%という、人気があるけれども難しい試験です。昨年は合格者が二人出たので、大学側も喜んでいます。毎年最初の講義の日に、「スポーツで いえば全国大会に挑戦することに相当するのだから、合格すればそれなりに評価される」と説明しています。 試験の出題内容の多くは、企業などで実際に使われているネットワークシステムを題材にしているので、受験勉強を通して卒業後に就職する社会で何が行われているのかということをかいま見ることができます。最近の学生は全員がインターネットを利用しているし、大学にはLANが設置されています。 この講座を企画した先生の話では、「情報通信システム全体の仕組みや、各教科で 教えていることの有機的な結びつきの整理ができるので、この講座には予想していなかった付随的な効果がある」とのことです。そういえば、大学4年間のカリキュラムを見ると、各論をボトムアップ的に積み上げるのが一般的であり、早い段階で、学問領域全体をトップダウン的に把握できるような講義が少ないようです。このことは、 今後の検討課題かもしれません。 都丸敬介(2003.5.24) |
なんでもマルチメディア(303):デジカメディジタルカメラ(デジカメ)の年間出荷台数がフィルム式カメラを追い越したと いうことですが、数十年間ズームレンズ付き一眼レフカメラを使ってきたので、デジカメを使うことに心理的抵抗感がありました。 都丸敬介(2003.5.18) |
なんでもマルチメディア(302):遺跡の旅タイ中央部の町アユタヤとスコタイの遺跡、そして、カンボジアのシェムリアップ近郊に広がるアンコールの 遺跡群を歩き回ってきました。9世紀から15世紀の始め まで続いたクメール王朝によって作られた、 アンコール・ワットやアンコール・トムを中心とするアンコールの遺跡は、写真から想像したよりもはるかに 壮大で見事でし た。 永く続いた内戦の影響で、隣のタイと較べて国の近代化がかなり遅れたことがよくわかりますが、アン コール観光の基地になるシェムリアップには快適な近代的ホテルが多数あります。公務員の平均給与 が月額50米ドルだというのに、欧米並みの一泊数百ドルのホテルに泊まるのは複雑な気分ですが、 快適な滞在ができることは間違え ありません。 フランスの文化教育担当大臣を務めた作家のアンドレ・マルローが、略奪しようとして発覚し、現地で 禁固刑を受けたことから有名な、東洋のモナリザと呼ばれるバンテアイ・スレイの女神の彫刻は実に魅 力的です。 この時代のことを書いた、アンドレ・マルローの小説「王道」を帰国後読み直しました。この小説に描 かれている1920年代のカンボジアの状況は今も残っています。 シェリムアップの近代的なホテル地区から10kmと離れていない村には電気も水道もありません。それで もテレビはかなり普及しているようです。高いアンテナ塔が目に付くので、ガイドに尋ねたところ、テレビ用 アンテナだということでした。電気はガソ リンエンジン発電機による自家製だそうです。日常の交通手段 は自転車とバイクです。バイクの3人乗りや4人乗りをよく見かけました。道端の屋台で売っている色付 きの液体は、清涼飲料水かと思ったらガソリンでした。SARSの影響で、飛行機もホテルも ガラガラでした。 都丸敬介(2003.5.11) |
なんでもマルチメディア(301):光IPネットワークNTTが4月23日に発表した3カ年計画によると、光IPネットワークサービス に力を入れて、2005年 には売上高2兆1千億円を目指すということです。 IP(インターネット・プロトコル)はインターネットのために開発された技術で、1983年から使われている 、すでに使い込まれた技術です。IPが開発された時代の通信回線は伝送速度が遅かったので、低速 回線を能率良く使うことで通信コストを節約することが重要でした。しかし、現在の光ファイバーネットワ ークは伝送速度が非常に速いので、光IPネットワークでは、従来のIPネットワークではできな かったい ろいろなことが実現できるようになります。ただし、光IPネットワークを新しい時代を支える基盤として活 用するためには、これまでの通信ネットワークでは困難だったことを実用化する新しい発想が必要です。 家庭まで光ファイバーを引き込むFTTH(ファイバー・ツー・ザ・ホーム)でブロードバンド通信を実現で きるといっても、魅力的なキラーアプリケーションがないではないかということが繰り返して指摘されていま す。それでも、IPネットワークによる音楽会のライブ中継などが始まっています。 IP電話の利用者が急増していますが、現在のIP電話のサービス機能は、既存の電話のレベルに達 していません。ただし、IP電話の実現技術は、もともと多地点ビデオ会議、つまり、複数の人が参加で きる仮想的な井戸端会議を想定したものです。 そして、音声を文字に変えるメディア変換や、複数のデータ符号化技術の中からどれかを選んで使うな どができるようになっています。このような、まだ使い込まれていない既存の技術を組み合わせるだけで も、新しいアプリケーションを開発できるのですから、3年後にどのようなサービスが実用になるのか楽し みです。 都丸敬介(2003.4.26) |
なんでもマルチメディア(300):誤報朝日新聞(2003年4月13日)のコラム「天声人語」を読んで驚きました。 「先日、トロイの丘に登った。古代ギリシャの詩人ホメロスの叙事詩とされる『イーリアス』で有名なトロイ戦争 の舞台だ。(中略) 丘の下に横たわるダーダネルス海峡を挟んで、こちら側がアジア、向こうがヨーロッパ側だ 大小の船が盛んに行き交 う様を見ていると、海峡は、大陸を分かちながら、一つに溶かしているように も思われる。隣国のイラクで、国連の査察が続く頃だった。(原文のまま引用)」 私は昔読んだトロイ戦争物語の舞台を自分の目で見たいと思い、数年前にトロイの遺跡に行きまし た。イーリアスに描かれている情景から、海が見えると思っていたのですが、海は見えず、トロイの丘の下 には草原が広がっていました。トルコ人のガイドに尋ねたところ、丘の近くを流れている川の土砂が堆積 して、数千年の間に次第に海岸線が遠くなり、今は海が見えないのだということでした。 今回のイラク戦争は、テレビを始めとする情報戦争として特徴付けられることが、 テレビや新聞で繰り 返して解説されました。そして、意図的な情報操作が行われていて、何が真実か分かりにくいということ が指摘されました。こうした時期に、真実を正確に伝える使命を持っている新聞の看板コラムが、多くの 人が知っている事実とは異なることを堂々と活字にしたことに疑問を感じます。 最近は、新聞や雑誌に掲載される情報通信関係の記事が多くなり、技術解説も掲載 されていま すが、曖昧な記述や誤った解説がかなり目に付きます。正確で分かりやす い解説を書くのは難しいこと ですが、誤った記述は困ります。 都丸敬介(2003.4.20) |
なんでもマルチメディア(299):農村電話1955年、当時の日本電信電話公社に共に入社した友人のFさんが、先月末に71才で 現役か ら引退しました。Fさんは、最後の仕事で、東南アジアのある国の政府から金メダルを授与されまし た。この仕事は大きなプロジェクトではなく、町から離れた小さな村に通信回線を設置して、村の人 たちが電話やインターネットを利用できるようにしたというものです。テストシステムの開通式には、政 府の高官が出席して、テレビニュースで中継されたということですから、現地の人たちの喜びがよく分 かりま す。 Fさんの仕事はシステム開発のコンサルテーションでした。話を聞くと、国際的な激しい提案合戦 があり、設置したシステムに落ち着くまでにいろいろな問題があったようです。決め手は、出稼ぎのた めに村から離れた人たちの声を、月に何度か聞くことができれば十分だという、基本的な要求を経 済的に実現することにあったようです。 この話を聞いて、私自身の昔の貴重な経験を思い出しました。入社して間もない訓練生の時代 に、北関東の山奥の村に1本の公衆電話回線を設置する仕事を命じられました。電話ケーブルを 設置するのには費用と時間がかかりすぎるので、開発されたばかりの3チャンネル無線装置を使うこ とになりました。この無線装置を操作するためには、国家試験に合格した無線技術者の資格が必 要なので、付け焼き刃の勉強をして 資格を取得しました。開通式には電電公社の幹部が招待さ れたのですが、代理を務めるよう指示され、村の長老達に囲まれて宴席の上座に座るという大変 なことになりま した。 Fさんの話を聞いて、その国の現在の姿が50年前の日本の姿に重なると同時に、その国の将来 の姿が見えるような気がしました。Fさんという一人のエンジニアが植えた苗が大きな森に育つことを 期待しています。 都丸敬介(2003.4.12) |
なんでもマルチメディア(298):近所の春2−3日暖かい日が続いたら、家に近い公園の桜が一斉に咲き始めました。この小 文を書いて いる部屋の窓から見える、梅林の花が残り少なくなり、数本のハナモモのつぼみが急に膨らみ始め ました。平凡社の百科事典には「ハナモモは成長は速いが、寿命も比較的短い」とあります。今見 ているハナモモは樹齢30年を超したかなり大 きな樹で、毎年満開になると、カメラを持った人たち が集まってきます。 去年、庭のアンテナ塔のてっぺんにカラスが巣を作り、一羽の子ガラスが巣立ったので、今年はど うかなと思っていたところ、今年もやってきました。去年のカラスと同じかどうか分かりませんが、巣作り の技術進歩に驚きました。木の枝をくわえてきて組み合わせるのですが、非常に不安定な場所な ので、去年は基礎工事に手間取り、巣が形になるまで3週間くらいかかりましたが、今年は1週間 で立派な巣ができまし た。 去年の巣は、秋の台風で跡形もなく吹き飛んでしまったので、工事開始条件は同じはずですが 工事方法が違うのです。アンテナの棒が十文字に交差している上に巣をつくるのに、去年は中心 部分から小枝を積み上げ始めました。ところが安定性が悪い ので、積んだ枝がすぐに落ちてしまい ました。今年は、かなり長い枝を持ってきて、巣の外枠から組み立て始めました。外側の大きい部 分を安定させてから、内側を補強したので、地面に落ちて無駄になった材料はほとんどありません。 どのような学習をしたのか、あるいは考えたのか不思議です。 去年気付いたことですが、カラスが巣を作った後、庭を荒らす野良猫が遠ざかりました。カラスに威 嚇されて怖いのでしょう。昨日の朝、面白い光景を見ました。野良猫がアンテナ塔に腕を絡ませて 立ち上がり、写真で見たミーアキャットと同じ形で首を伸ばして、巣を見上げているのです。しばらく 見ていて納得したのか、どこかに消え失せました。 都丸敬介(2003.3.30) |
なんでもマルチメディア(297):戦争報道3月20日に始まったイラク戦争のテレビ放送を見ていると、改めて情報通信ネッ トワークの進歩 の早さに驚かされます。 砂漠を移動中の軍用車からの状況解説や、各地から送られてくる映像を見聞きして 感じること は、衛星通信回線利用の柔軟性が一段と進んだことと、通信機器の技術進 歩です。低速電話 回線を使っているためと思われる品質が悪い映像の放送もあります が、大部分の映像品質は、ア フガニスタン戦争の報道と比較して、かなり良くなった 感じです。音声の明瞭度も良くなりました。 テレビ放送の解説によると、今回の戦争の大きな特徴は、戦略情報ネットワークの進歩だという ことです。GPS(全地球測位システム)によるミサイル誘導精度の大幅な改善だけでなく、コンピュ ーターネットワークによる、迅速で緊密な情報交換システムが活躍しているようです。戦車に搭載さ れたコンピューター・ディスプレイ に、カーナビゲーションのような画面が表示されて、その中にいろい ろな情報や指示 が示されている映像がありました。 このようなシステムのソフトウェアの規模はどのくらいあるのだろうか、実戦に使 う前にどのようなテ ストをしたのだろうか、故障や破壊のために機能しなくなったときはどうなるのだろうか、などと考えると 、技術的興味が尽きません。 軍事目的で開発された技術の多くが、その後、日常生活のための便利な道具に転用 されてい ます。GPSもその一つです。一日も早く戦争が終結して、今回の戦争を特 徴付けた情報通信技 術が、平和な社会をいっそう快適にするために活用されることを 期待します。 都丸敬介(2003.3.23) |
なんでもマルチメディア(296):コールセンター中国の大連に電話コールセンターを開設する企業が出現したということです。コー ルセンターは、 電話による各種の問い合わせに応対する窓口ですから、企業の顔とも 言える場所です。これを国 外に設置するということは、いくつかの重要な時代の変化 を示しています。最も重要なことは、中 国の人件費が安いので、通信料金が増えて も、コールセンターの運営にかかるトータルコストが減 るということです。このこと が成り立つほど、長距離電話のコストが低下したわけです。 コールセンターの先駆者と言えるのが電話番号案内です。NTTは数十年前に電話番号案内 業務を集中化しました。それまでは、各地域の市内電話局がもっていた電話番号案内業務を、 少数の場所に統合したのです。電話番号を問い合わせる人が持ってい る情報があいまいな場合 、応答する人にはある程度の土地勘が求められます。そこで、オペレーターの訓練の一環として、 担当地域に出張して土地勘をつけることが行 われました。 中国に開設されるコールセンターの中には、自社製品のためのコールセンターでは なく、複数の 企業からコールセンター業務を請け負うものがあるようです。この場合 は、規模を大きくするほど、 人件費が安いことの効果が大きくなります。コールセン ター利用者が住んでいる場所の土地勘や 生活様式についての知識が無くても、マニュ アル通りの応対ができるようにオペレーターを訓練すれ ば、無難に業務をこなせるのでしょう。 外国人のオペレーターを相手にして、外国語の学習をするといった、コールセン ターの新しい活 用方法がそのうちに実現するかもしれません。 都丸敬介(2003.3.16) |
なんでもマルチメディア(295):コンテンツ識別ブロードバンド情報流通ネットワークの利用者が急速に増加していますが、大部分 の利用者は、 既存のインターネット利用者です。新しい利用者を開拓するには、従来 のインターネットのホーム ページとは異なる、多様な情報コンテンツが必要だという 指摘が繰り返されています。そして、いろ いろな形態のコンテンツ流通が試みられて いますが、新しい時代の幕を開けるようなキラー・コンテ ンツが現れていません。 しかし、魅力的なコンテンツは沢山あります。例えば、NHKがテレビジョン放送 開始50周年記 念に開設した、NHKアーカイブスのコンテンツを家で見ることがで きれば、素晴らしいことです。世 界中で毎日制作されている放送番組も魅力がありま す。これらのコンテンツの自由な流通を妨げ ている原因の一つとして、コンテンツの 知的財産権に関する法律の不備が指摘されています。 コンテンツの財産権あるいは所有権を無視した不正コピーの流通が既に行われてい ることに対し て、有効な対策がないからコンテンツを流通ネットワークに乗せないと いうのは非建設的な発想で す。こうした問題を解決するのに役立つ技術の一つとし て、個々のコンテンツを識別するコンテンツ 識別子(コンテンツID)の国際標準化 が検討されています。単に、コンテンツの検索に利用するだ けではなく、不正に流通 しているコピーの出所を突き止める、追跡可能性(トレーサビリティ)機能 も検討さ れています。 制度と技術がうまく連動して、豊富なコンテンツが世界規模で流通する時代がくる ことを期待し ています。 都丸敬介(2003.3.9) |
なんでもマルチメディア(294):あかい酒デパートの日本酒売場に、「あかい酒」というのがありました。ワインのロゼに似た、あまり濃くない色 の、透明感があるきれいな酒です。紅麹を使って赤い色を出し たということです。さらりとした感触で 、冷やして飲むのに適しています。オンザ ロックやカクテルのベースにすると良いという説明書が付いて いましたが、これは日本酒になじみが薄い若い人たち向けの説明かもしれません。 日本酒ではありませんが、外国の航空会社の機内では、知らなかった酒に出会うこ とがときどきあ ります。その一つに、フランスの航空機で見つけた、梅のブランデー があります。ブランデーというと、ワ インを蒸留したものと思っていましたが、果実 酒を蒸留したものはみなブランデーだそうで、梅のブラン デーのラベルには、ブラン デーを意味するオー・ド・ヴィーと書いてありました。これを見つけたときに隣 席に いた人が物知りで、ドイツとの国境に近いストラスブールで作られていると教えてく れました。そ の後しばらくしてから、パリの空港の売店で、このブランデーに再会し ました。同じメーカーの製品で、 梅のほかにも梨など数種類のブランデーがありまし た。 フランスの北部、ノルマンディのカンに滞在したことがありますが、ここの特産品 は、リンゴのブランデ ー「カルバドス」です。ホテルの売店には、何種類ものカルバ ドスがあるのに、ブドウのブランデーはあ りませんでした。 オーストリア土産として人気がある「モーツァルト」を知ったのは、オーストリア 航空でウィーンに行っ たときです。とろっとしたチョコレート味のこの酒を、スチュワーデスがオンザロックにしてくれました。オスロ ーからフランクフルトに飛んだ飛 行機の機内には、ドイツ産のアルコールなしワインがありました。赤と 白の両方が 揃っていて、軽い甘口ワインの風味がありました。ビジネスランチや、パーティー用 に人 気があるということです。こうした、雰囲気作りに適した酒がいろいろあること は、その国や地方の文 化、あるいは生活様式と深く関係があるのかもしれません。 都丸敬介(2003.3.2) |
なんでもマルチメディア(293):eスクール環境光ファイバーケーブルと高速無線LANのネットワークインフラに、大量のパソコン を接続して、インタ ーネットに自由に高速アクセスできるシステムが、幾つかの小学 校に導入されたということです。これ は、小学校でのパソコン導入が、パソコン・リ テラシー教育の段階から一歩進んで、パソコンとインタ ーネットを学習のための手段 として利用するようになった、画期的なことと言えます。このような学習 環境を「e スクール環境」と呼ぶことができるでしょう。 eスクール環境が多くの学校に普及すると、多くの分野に新しい影響をもたらすと 考えられます。 特に重要なことは、学校のeスクール環境と同じような学習環境を、 多くの家庭が導入することを希 望するのではないかと言うことです。最近、家庭での ブロードバンド・ネットワーク機能の導入が急速 に進んでいますが、依然として、何 に使うのかということが議論されています。これは、強力なキラー コンテンツが見え ていないためですが、学校教育で使っている学習教材に家でアクセスして、予習や 復習ができるとなると、学習教材が有望なキラーコンテンツになります。 eスクール環境と同じレベルの、ブロードバンドネットワーク環境が家庭に普及す ることは、かって、 ピアノが多くの家庭に普及したことに匹敵します。主人や主婦の ためではなく、子供のための設備 導入となると、価値判断の基準が変わります。こう した変革のシナリオを誰が作り、どのように推進 するのか、興味深いことが始まりま した。 都丸敬介(2003.2.24) |
なんでもマルチメディア(292):輪読会昨年ノーベル賞を受賞された小柴昌俊さんが、日本経済新聞に連載している「私の 履歴書 」(2月16日)の中で、若い頃の話として、「理論物理の研究室だから、昼間 は勉強会だ。最 新の論文を読み議論を闘わせた」と書かれています。 1950年代に私が就職して配属になった、NTT電気通信研究所の研究室では、毎週時 間を 決めて、世界の最先端研究の論文を勉強する輪読会が行われていました。10人程 度の研究 グループで、グループリーダーが探してきた文献を、手分けして読んで紹介した後、皆で議論をす るのです。英語の文献だけではなく、ドイツ語やフランス語の 文献を渡されて、死に物狂いで辞 書を調べたことは今でも記憶に残っています。 1960年代中頃から、次々に大規模の実用化プロジェクトが始まり、いつしか、小規 模グルー プでの輪読会が消えてしまいました。けれども、新しい研究計画を作るとき には、世界中のめぼ しい文献を集めて、手分けをして分析しました。このことが、若 い研究者の育成に役立ったことは いうまでもありません。 現在、多くの企業の研究開発部門でどのような勉強会を行っているか知りません が、単に情 報を収集、分析するだけではなく、仲間で議論することが大切です。学会 の研究会は、本来そ のような目的を持っているはずですが、最先端分野で争っている 組織のライバル同士で、本音 の議論ができるかどうかは疑問です。最も好ましい形 は、組織の利害に拘束されない仲間同 士の議論でしょう。この場合も、個人レベルの ライバル関係を完全に除くことはできないでしょう が、良い意味のライバルがあるこ とは、自己研鑽のためにプラスの効果があります。 新しい話題を取り上げて議論をするのは、若い研究者だけに役立つことではありま せん。定年 退職して時間ができた人たちが、実社会生活で得た知見をバックにして、 最先端の研究成果 を調べて議論を交わすことは、大変刺激的なことと思います。 都丸敬介(2003.2.16) |
なんでもマルチメディア(291):多様なIP電話
音声データを運ぶ、IP電話の普及に弾みがついてきました。一 口にIP電話と言っても、その実現 方法や特徴はいろいろあります。 第1は、従来の電話網の中の、長距離中継部分としてIPネットワークを使うもので す。本格 的なIP電話サービスを最初に提供した、フュージョン・コミュニケーション ズのサービスがこれに相 当します。電話利用者は既存の電話機を使えるので、この サービスを利用するために新しい端 末機器を導入する必要はありません。音声データ をIPパケットで梱包して運ぶ仕事は、既存の 市内電話交換局と、IP方式の中継ネット ワークをつなぐ場所にある、ゲートウェイという接続装 置が行います。 第2の方法は、利用者端末で音声データをIPパケットに乗せる方法です。ADSLサー ビス事 業者が提供しているIP電話はこの方式です。この場合は、音声データをIPパ ケットで梱包する 機器を利用者端末の一つとして用意する必要があります。 それぞれに一長一短があるので、どちらか一方が支配的になるかということは、現 時点では分 かりません。ただし、マルチメディア情報交換機能の実現ということで は、第2の方法が優れてい ます。IP電話機能を実装したパソコンがすでにあります。 これを利用する、大画面のテレビ電話や、多地点テレビ会議システムの開発は、1990 年代初 期から進んでいます。離れた場所にいる複数の人が同時に参加するテレビ電話 を実現するた めには、通信の状態を制御するための高度の技術が必要ですが、この分 野の技術も実用段 階になりました。SIP(セッション・イニシエーション・プロトコ ル)という技術がその一つです。SIPの 中身を分析すると、これを開発した人たち の、興味深い夢が見えてきます。 都丸敬介(2003.2.10) |
なんでもマルチメディア(290):パスワードの安全管理社会人相手にネットワーク技術の講義をしている中で、パスワードの安全管理をど のように実 施しているかを尋ねると、驚くほど危ないことが分かります。入手したパ スワードを使って他人にな りすますことが、ネットワーク犯罪の基本の一つであるこ とはよく知られています。他人が推定しに くいパスワードを使うことと、パスワード を時々変更することが、ネットワークセキュリティの基本で あると多くの本に書かれ ていますが、実施状況は、依然として低いレベルにあるようです。 パスワードに有効期限を設けて、期限切れが近づくと自動的に警告を送るという、 安全なシ ステム運用方法がありますが、これを行っていない企業が多数あることは、 恐ろしいことです。あ る企業では、定期的にパスワードを変更するけれども、新しい パスワードを上司のグループリーダ ーに知らせるようになっているということです。 社員番号や学生番号をパスワードにしている企業や学校もあるようです。皆さんの所 では、ど のような運用をしていますか。改めて調べてみると、怖くなるかもしれません。 パスワードを頻繁に変更すると、今使っているのが何か分からなくなることがあり ます。米国で 出版された本で、他人に解読されにくく、本人が覚えやすいパスワード の作り方というのを読んだ ことがあります。自分が好きな文章の、個々の単語から文 字を選んで並べるという方法は面白 い発想です。アルファベットの間に数字を挟む と、安全性が増すという説明も説得力があります。 術もあります。 都丸敬介(2003.2.3) |
なんでもマルチメディア(289):eラーニングこのホームページを掲載しているbinetが事務局を務めている、テレコム・ニュー サービス研究会の1月28日 のセミナーのテーマが「人材育成とeラーニング」となっ ています。 eラーニングは、情報通信ネットワークを利用する遠隔教育の総称で、放送大学の ようなテレビジョン放送 形式から始まり、テレビ会議システムを利用するもの、そし て、インターネットの技術や設備を利用するものへ と発展してきました。インター ネット方式のものを、1997年頃からWBT(ウェブベース・トレーニング)システムと 呼んでいましたが、現在ではeラーニングというと、大部分がWBTシステムを意味す るようになりました。 eラーニングシステムの主な構成要素は、ネットワーク接続され学習者用パソコ ン、 教材サーバー、及び学 習管理システムです。日本国内のeラーニング市場規模 は、2002年度で600〜700億円であり、年率 15%程度の大きな成長率で、数年間は伸び 続けると予想されています。ただし、これまでのeラーニング市場 は、eラーニング システムの構築と教材作成のための投資金額が、学習者からの受講料収入よりも多いよう です。 eラーニングの普及のためには、いくつかの重要なポイントがあります。なかで も、学習者の設備と教 材の質が重要です。通信インフラとして、高速で動作するLAN を利用できる企業内教育では、通信回線の 伝送速度と通信コストを学習者が気にする 必要がありませんが、不特定の学習者が利用する公開eラーニ ングでは、必要な伝送 速度と通信料金が、普及の大きな足かせになります。 セミナーなどに参加する機会が少ない地方在住者にとって、eラーニングは大変有 り難いシステムですが、利 用できる通信回線の伝送速度や通信コストの面で、大都市 在住者と比べてハンディキャップがあります。全 国のどこにいても、最低基準の学習 設備(通信回線やパソコン)を使って、同じコスト負担で学習できるeラ ーニングシ ステムの実現が、これからの大きな課題です。 都丸敬介(2003.1.26) |
なんでもマルチメディア(288):分散と集中IP電話技術が、従来の電話料金の価格破壊の引き金になりました。過去30年間の電話システムの進化を 見ると、一貫している流れがあります。それは、いろいろな機能のユーザー端末側への分散です。1980年代に 実用になったISDNでは、アナログ音声をディジタル音声に変換する機能が、電話会社の交換機からユーザー端 末に移されました。パソコンを利用するIP電話では、ディジタル音声をパケット化してIP(インターネットプロトコル) ネットワークに乗せる機能が、通信事業者のゲートウェイからパソコンに移されました。 複雑な機能をユーザー端末に移せば、電話交換網の内部はすっきりします。したがって、通信コストが下がる ことになります。その代わりユーザー端末のコストは上昇します。ただし、LSIの進歩によって、ユーザーが高価と 感じない程度のコストで、高度の機能を備えた端末が実現できるようになりました。 IP電話には、ユーザー端末でパケット処理をするものと、通信事業者のゲートウェイと呼ぶ設備で集中的にパ ケット処理をするものがあります。それぞれに長所と短所があります。端末レベルのIP電話は、通信料金が安く 、機能の拡張性が優れていますが、通信品質や安定性はゲートウェイ方式よりも劣ります。通信事業者の幹 線ネットワーク(コアネットワーク)が完全にIP化されても、従来の電話機を使い続けるユーザーがかなりあるはず です。したがって、パケット処理機能だけではなく、いろいろなサービス機能についても、端末レベルの分散方式 と、通信事業者の設備で処理する集中方式が併存します。これから数年は、電話サービス機能の分散と集 中の激しい主導権争いが予想されます。 面白いですね。 都丸敬介(2003.1.14) |
なんでもマルチメディア(287):通信と放送の新時代明けましておめでとうございます。 ITバブルとやらがしぼんで、新しい活力を求める模索が続いていますが、今年は通信と放送が連携した、本 格的なブロードバンド情報サービスが発展する予感がします。放送事業者が地上波ディジタル・テレビジョン放 送を導入し、通信事業者がFTTH(ファイバー・ツー・ザ・ホーム)の本格的な普及に力を入れることが、新時 代の大きな牽引力になるはずです。 米国では、2002年末のCATV加入世帯数が、初めて前年度比で減少したということです。多チャンネル衛 星放送によって、放送分野でのCATVの存在価値が減少すると同時に、高速インターネットアクセス回線とし ての、CATV設備利用の優位性が低下してきたことが影響しているようです。 日本の通信事業者は、すでに世界一の普及率を実現しているFTTHサービスの利用料金を、個人が負担 できる水準まで下げる努力をしています。2002年のFTTH利用者の増加傾向のデータを見ると、テークオフし た様子が明らかです。 インターネットによる放送型情報流通では、すでに、従来の放送とは違った新しいことが始まっています。注目 すべきことは、10分程度の短いビデオ情報を提供するサイトが増えていることです。FTTHによって、テレビジョン 放送と同程度の、安定した良好な画像品質の情報を自由に入手できるようになると、既存のメディアは大き な影響を受けます。今年一年の間にどの程度の変化が起こるのか、大きな楽しみです。 都丸敬介(2003.1.5) |