環境と自然シリーズ第一弾 |
破壊かそれとも生き物たちへの試練か?
世界の異常気象はガラパゴスから始まる
エクアドル領、ガラパゴス諸島は南米大陸の西、980`沖の太平洋にある。エクアドル領である諸島は、赤道をまたぐようにして10平方`以上の広さを持つ13の大きな島と6つの小島、多くの岩礁からなる。陸地の総面積は約7900平方`ほどで、ちょうど静岡県ぐらいの広さ。ほとんどが火山島で、諸島の西にあるイザベラ島とフェルナンディナ島の火山は現在も活動中。 |
ふだんのガラパゴスは、砂漠気候と思えるほど雨が少ない。白樺と見間違えそうなパルサントの木は、乾季に枝からすべての葉を落とす。水分の蒸散をふせいでいるのだ。そして、ひたすら雨を待ち続け、時には数年も葉をつけない時もあるという。 乾季が終わり、まとまった雨が毎日のように降り出すと、パルサントの森は一週間足らずで緑の森に生まれ変わる |
スカレシアの林に進入してきた帰化植物たちガラパゴスの山岳地帯ではスカレシアというキク科の植物が森林を作っている。近年、この固有種の森に大陸から持ち込まれた植物たちが進入し始めた。牧草として持ち込まれたススキのようにもみえるエレファントグラスやマラリヤの予防用として入ってきた、葉っぱのおおきいゴムの木のようなキニーネなどだ。エルニーニョは帰化植物を勢いづかせ、雨の助けをかりていっきに分布を広げつつある。特に人が造った道路の際は日当たりも良く、水の流道にもなっていて、帰化植物たちの絶好な生育場所。エルニーニョが帰化植物にとって勢力拡大の多大な助けとなっていることは、おそらく間違いがないだろう。 砂漠気候のようなガラパゴスには、一年中水をたたえた川はまったく見つからない。だが、エルニーニョは突如としてこの諸島に川を造ってしまった。 |
降っては止み、またすぐやってくるスコール。乾季のいま、本当なら雨一粒たりとも落ちてこない、どこまでも青い空が広がっているはずだ。なのに、空はいつもスコールを呼ぶ雲でおおわれている。海はもう1年以上もなま暖かく、餌の魚たちも姿を消してしまった。 |
エルニーニョによってもたらされた多量の雨は、ゾウガメたちにとっては恵みの雨となっている。ふだん乾季に入ると、ゾウガメの好きな緑の植物は乏しくなり、ゾウガメたちは食料を求めて低地から霧がたちこめる高山地帯へと、何カ月もかけて登って行く。しかし、エルニーニョは低地で豊富な餌をゾウガメにあたえ、移動パターンまで変えてしまった。 |
スコールも過ぎ去り、しばし太陽光の下で親子そろって体を乾燥中。メスは卵を海岸近くの砂地に産む。雨の多い今年の繁殖は、ほぼ全滅状態のようだ |
海に真っ逆さまにダイブして漁をすることで有名なアオアシカツオドリ。今年はカツオドリの親たちにとって受難の年である。いくらがんばっても、ヒナを若鳥までおおきく育てられそうにないのだ。餌不足が想像以上に深刻で、ふだんなら1時間ほどですむ漁も、今年は8時間かけても同じ量の魚がとれない。可愛いヒナたちもすでに飢え始めていた。 |
いつも漁船を追いかけまわすグンカンドリも、今年は大群。ふだんなら、他の海鳥たちから餌を奪って生きているグンカンドリたちだが、お目当ての海鳥も徐々に島からいなくなり、例年以上に漁船を追いかけ、餌をねだらなくてはいけないようだ。上空を飛ぶメスによく見えるようにと、オスは紅い喉袋をできるだけ大きく膨らまし、けたたましい喉声を発しながら頭を打ち振る。こんなオスの必死の求愛も、エルニーニョからくる餌不足には勝てず繁殖率が激減していた。 |
魚市場では、物乞いのためにたくさんのガラパゴスペリカンが集まっていた。いつもはこれほどこない。 |
地球気候を狂わすエルニーニョ |